まるで映画:トランプの恥部?に迫る英国スパイとロシア文書

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2017年1月10日のCNNレポート(cnn.comより)

遅まきながら、明けましておめでとうございます。
前回の更新からずいぶんと時間が経ってしまいました。

約半年ぶりに行われたという1月11日のトランプ米次期大統領の記者会見。日本ではトランプがCNN記者に威圧的な態度で質問させなかったことが話題になっています。同局が前日に、政府高官の間で出回っていたある機密文書について報じていたことについて、トランプが怒り心頭になっていたことが、その理由と言われています。

私は、記者会見での騒ぎよりも、その文書の内容と出自があまりにトンデモで、まるで映画のような展開を見せていることにここ数日夢中になっていて、英語配信のニュースに釘付けになっています。

以下、これまでにわかっていることをできるだけ簡潔にまとめると:

経緯

  • この文書は、ワシントンDCの調査会社「フュージョンGPS」が作成したもの。2015年当初は、大統領選に向けた共和党の予備選でトランプと争っていたジェフ・ブッシュ候補を支持するグループからの依頼で調査が始まったが、トランプがブッシュを退けて共和党の候補になり、ヒラリー・クリントンとの本戦に入ってからは、クライアントが匿名の民主党支持者に移った。
  • フュージョンGPSはこの調査を、イギリスの民間企業向けの調査会社「オービス・ビジネス・インテリジェンス」社に外注。同社は、英国の諜報機関MI6の元職員でロシア関係の専門家であるクリストファー・スティール氏が経営する。
  • スティール氏は前職からのロシア人脈を駆使し、トランプ氏とロシアの関係を調査。その結果、トランプの大統領としての正統性と資質に大きな疑問を投げかける爆弾情報が判明し、米国政治と安全保障の行方を深く懸念したスティール氏は、クライアントの了承を得ることなしに、FBIの知人にこの文書を手渡すという、「常軌を逸した」行動に出る。当時FBIは、大統領選の山場にクリントン候補をめぐる「メール問題」を蒸し返していた最中であり、この件についても捜査を進めているのか否かがはっきりしなかったため、この件が世に問われるべきと考えたスティール氏はさらに雑誌「マザー・ジョーンズ」編集長にも接触し、匿名を条件に取材を受け、この文書の存在を語った。編集長はこのインタビューに基づいて、文書の存在を示す記事を2016年10月に掲載
  • 調査結果をまとめた35ページに渡るこの文書はその後、米英の諜報機関だけでなく、米国メディアの手にも渡ったが、メディア各社は内容の裏どりができなかったため、ここまで報道せずにきた。
  • 一方、CIA/FBI/NSCなど米国各機関のトップは、文書の内容の真偽については確証がないながらも、過去の仕事ぶりから高く評価してきたスティール氏発の情報であることを重視。先週、オバマ現大統領とトランプ次期大統領に、当該情報の存在を知らせるべく、文書の内容を2ページにまとめたメモを提出した。
  • この要約の存在を、1月10日にCNNが初めて報道(内容については大まかな分類のみとし詳細は伝えず、またその真偽が不明であることも強調しつつ)。つづいて、インターネット・ニュースサイト「バズフィード」が、35ページの報告書そのものをトランプ会見の直前に掲載したことから、大騒ぎに。
  • スティール氏は現在、身の安全のために家族とともに行方をくらませている。隣人に3匹の飼い猫の世話を頼んで消えたとされる。

文書の主な内容
大きく分けて2つのことが書かれている。

  1. トランプ氏がモスクワを訪問時にホテルのスイートルームで行なったとされる「不名誉」な性癖の動画をロシア政府が保有している。
  2. トランプ陣営外交政策チームの要員カーター・ページ氏をはじめとするトランプ関係者が、大統領選期間中数回にわたり、ロシア政府関係者と接触。ヒラリー・クリントン候補の支持下落の要因とされた同氏の「メール問題」について、協議をしていたとされる。

何が問題か?
この内容が事実であれば、動画の流出を恐れるトランプ氏が、米国の国益よりも動画を保持するロシア政府の意向に沿った政治・政策を行う恐れが生じます。

プーチン氏は国内政治において政敵を追い落とすために、自身の出身機関であるロシアの諜報機関KGBの常套手段とされるいわゆる「ハニートラップ(蜜の罠)」を多用してきたという事実、

悪びれることなく親族を閣内中枢に起き、国や社会よりも自分の利益を重視するかのようなトランプ氏の姿勢、そして

選挙中からやたらとプーチンを持ち上げきたトランプ氏の言動、

などを見ると、この筋立てがかなりの現実性を帯びます。

米国選挙をめぐる裏工作、英国のスパイ、ロシアの陰謀、機密文書、ハニートラップ、政治の闇の核心を追及するジャーナリストたち…。
登場する人物や出来事や現象が、もうまるで映画。
1976年の名作、「大統領の陰謀」を彷彿とさせます。

今後この件がどこまで追及されるのか(究極的には弾劾にまで進むのか)は、共和党がこの件をどこまで深刻に捉えるかにかかっています。選挙期間中から、トランプ氏に関するいかなるスキャンダルも本人に一蹴され、アカウンタビリティも蹴散らされ、事実か否かは事態の進展に影響を及ぼさないというパターンが続いているので、本件もそうなってしまう可能性があると思います。

私自身はトランプが大統領に民主的に選出されたこと、彼の組閣、彼の政権が行うであろう政策それ自体に非常に危機感を持っており、だからこそしっかりとした政治プロセスを通じて彼が実質的に敗北し、彼の言説や政策が退けられることが人類・社会にとって必要だと考えていますから、仮に、現在はまだ非常に可能性が低い弾劾のような事態に万が一なったとしても、彼を選出したアメリカ社会の治癒、その病巣を育てた新自由主義の除去にはならないため、あまり手放しで喜べないと思います。

しかし、政治スペクタクルとしては今起きていることはなかなかに歴史的だと思うのでしっかりと見届けたいと思います。

最後に、この一件を巡って気に入ったリンクを2つご紹介。

一つは江川紹子さんによる日本のメディアに対する重要な指摘。日頃政治的見解でCNNと対立しているFOX Newsが、トランプのCNNに対してCNNを擁護。日本で権力がある新聞やテレビ局を攻撃した際に日本のマスコミ各社が傍観するということを批判。

もう一つはアメリカで放送されているコメディー番組(↓)。

この動画を見て、件の「性癖」が具体的に何を指すのかわかったのですが(Twitterでトレンディングしていたようですね)、アメリカで大人気の南ア出身コメディアン、トレバー・ノア氏はこのネタでトランプを散々おちょくった挙句、「信憑性が確認できていない情報を流すことはよろしくない」というトランプ陣営の言葉に対して、「本当にそうだ」と言いながら、過去にトランプ自身が「真実かどうかはともかく、多くも人が話してるんだから」と、オバマの出自などについてのデマを流してきたことを「よろしくないよねぇ」バッサリ。

こういう政治風刺が日本でも主流になるといいな、と思うのですが、風刺をするためには、「政治はこうあるべき」という原則的な立場をコメディアンが持っていること、それを一定の規模の有権者(視聴者)が共有していること、その掲載・放送を推進する商業メディアがあること、という条件が必要で、多分私が羨んでいるのは、この番組それ自体ではなく、この番組を成立させている社会的条件なのだろと思います。

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